CD Review / BOΦWY / MORAL
『MORAL』
あたしが一番最初にBOΦWYをレンタル屋で借りてきた二枚のアルバムのうちの一枚でした。正確には借りてきたのは『MORAL+3』だったですけど。『MORAL+3』とね、『BOΦWY』を借りてきたんです、始め。それでカセットテープのA面が『MORAL+3』で、『BOΦWY』がB面だった。
今から思えば「変なセレクトだなあ」と思わずにいられない。ある意味ではBOΦWYの中のダークサイド的な位置づけ(私的に)の二枚を、よくもまあ初っぱなからセレクトしたもんだなあ、と思ってしまう。この二枚で「BOΦWYいいかも、好きかも」とか思ったんだから、この後、あたしがどのアルバム聞いても「BOΦWY最高!」とか叫んだりしても、けっこう不思議じゃない気がする。
正直、最初は『MORAL+3』と『BOΦWY』で、ボーカル一緒だよねえ、て。確かに同じ人の歌だとは解るんだけど、歌い方とか歌の内容とか、すごい違いますよね。戸惑いとかではなかったんですよ。単純に「変なのお(でもなんかキライじゃないなあ)」という感じでした。
それで、今さっき改めて作詞・作曲の欄を見ていたんですけど。このアルバムは氷室さんの作詞・作曲が多いなあ、と。しかも、それ言い出すと『BOΦWY』も多いんですよね。やっぱり、この二枚から入っちゃったもんだから、なんだかんだと言いながらあたしは氷室さんのメロディに弱いのかもしれない。とか言ってみたり(笑)。
『INTRODUCTION』
特にどう、て事もないんですけど、この曲を知ってあたしは「INTRODUCTION」て単語を覚えた(笑)。びっくりするくらい英語(数学も)バカだったあたしなんですけど、BOΦWYのおかげで変な単語とか英語の綴りとかいっぱい覚えたです。
『IMAGE DOWN』
最初に聞いた時は「なんじゃこりゃー」て思った。だって歌詞がなんかすごいんだもん。愛とか恋とか、それ以外の歌詞の歌って知らないわけじゃなかったけど、とにかく「何について、何を歌ってるんだ」という衝撃でした。その突き抜け加減が自分の中ですごい大きくて、それが心地良い自分がなんだか不思議で面白かったです。それに、音楽に疎い子だった(今も)ので、Aメロ、Bメロ、サビ、という構成以外の曲って当時は特に聴いた事なくて、そういう意味でもあたし的に斬新でした(あはは)。
後に歌詞違うバージョンのデモとか聴いて、「まわしまわされまるで風車〜」という部分が自分的なツボ。あの歌詞は変えて良かったと思うな(笑)。
(でもその変えた方が良い歌詞を聴くと、あたしは何故かワクワクする)
だけど変えた後も後で「まるきりタイフーン」て、とは思わずにはいられないあたしであった。
この歌詞はでも、とても核心突いてると思うんだよねえ。
それが多分、心地良かったんだと思う。
『SCHOOL OUT』
この辺の曲が氷室さんの作曲だったのが今更ながらに「へえ」って感じがする。 そう言われればそんな感じもするわねえ、という。
この歌詞だっけ。「この歌に感動(?)して学校辞めました」みたいなファンレターが来たから、それ以来ライブで歌わなくなったって曲、ねえ?
「SCHOOL OUT = 学校から出ちまえー」て受け取ったんだろうな。
でも、わからんでもない(笑)。
あくまでストレートに、単純に素直に受け取ったらそうなっちゃうよね。
「2月の終わりに震える奴等」って辺りの歌詞なんかが、こう、いまいちセンスないなあ(2月て)と思うけど、そういう生の言葉が入り込んでるのは「狂介」の頃の特徴だとも思う。「見失うぜ 本当の事」あたりで、やっと核心突いた事が聞けるんだけど、歌詞はここで終わり(笑)。「本当に大事な事は、目には見えないんだ」というのは、フランスの有名な哲学的児童文学『星の王子さま』の有名なセリフですけど、雰囲気的にはそんな感じですか(笑)?
(いや、きっと多分違うと思う)
『ELITE』
この頃の歌詞は「レールにはまった生き方」というのに、氷室さんはかなり執着しているような気がする。決まったコースの流れに乗ってしまうと、そこから外れる事にもまた労力が必要になってしまって、自分で「違うなあ」と思ったとしても、なかなか外れられない。そのままソコが居心地良くなるも良し、最初っからソコが格好良い最良のコースだと盲目的に信じるも良し。だけど、居心地悪いと感じているのならばレールを抜け出そうよ、みたいな感じの歌詞が特に『MORAL』は多いですね。
だけどね、本当にレールから外れて生きられたら、逆にこういう歌詞は書かないでしょうから(書く必要がない)、この時期ってやっぱそういう鬱々とした生活やったんかなあ、とか、そういう事を思います。行きつ戻りつ、みたいな(妄想にすぎませんが)。
自分とは違うし、そうはなりたくないし大嫌いなんだけど、それでもコンプレックスやったんでしょうかね、(ステレオタイプに)エリートな人。
『GIVE IT TO ME』
この歌は、自分の中で氷室さんの恋愛観の大きな核的存在のように思えてます。 あくまで勝手にですけど。
「見つめ合う時間と心など欲しくない
そうゴメンさ ままごとは沢山さ
我慢できずに抱いたらそれきりさ 愛しちゃいない」
すごいせつない歌詞だなあ、と思う。イヤだって思ってるのに、違うってわかってるのに、それでも求めずには居られないって事ですよね。言葉としてはすごく冷たいヒドイ男て感じですけど、頭では「体がなきゃ誰がオマエを」て思ってんのに、それでもどこか寂しくて一人ではやりきれなくて、偽りの温もりでも側に置いておかないと不安なんですよねえ。
でも自分はイッパイイッパイだったりするから、相手の思いまで受け止めたりできないし、だんだんお互い、お互いにそうなってくるだろうし、だから「我慢ができねえ」てなっちゃう。
そして「愛さえなきゃ上手くいくのに」という結論を自分の中に出す。結局、それだけ甘く温かな愛を求めてるという事だと、あたしは勝手に解釈しちゃってたりして。
普通に、かなり好きな曲です。
『NO.N.Y.』
最初に聴いた時は、この曲だけ『MORAL』の中じゃ浮いてるなあ、なんて風に思っていました。今では、最初のドラムの音聴くと、それだけでもう無条件にワクワクしちゃうんですけど。
いつかのライブ音源で氷室さんが、
「この曲は人形(だと思う)の歌だと思うんですがどうですか?
というファンレターが来たんだけど、ちがうぜ」
なんていうのがあったんですよ。
でも、そもそもこの曲て歌詞は深沢さんなワケで、どういう作り方して、氷室さんがこの歌詞の制作にどういう関わり方したかとか、そういうのは当然、あたしには全くわからないワケなんですけど、「あんたが書いたわけでもないのに『違う』て言い切るなよう」てちょっと思っちゃった(笑)。いや、別に良いんですけどね。
ベルリン編のこの曲のPVが良いです。あのPVでは若い布袋さんがとても可愛い感じですよねえ。氷室さんが外人の女性に「ちゅ」てするのもかなり良いし。ビデオの『SINGLES』でも、この曲は氷室さんと布袋さんの「ちゅシーン」があったりと、この曲は氷室さんが誰かに「ちゅう」する歌なのかしら、とか思うとけっこう和みます。
『MASS AGE』
こうなって来ると、逆にこの曲が布袋さんの作曲というのがオモシロイ。でも、ズンズンタッタ、みたいなリズムの刻みは布袋さんぽい気も(笑)。布袋さんのリズムて、ちょっと丸いですよねえ? なんて、あたし全然そういうのわかんないんだけど。
布袋さんかあ、と思えば間奏部分の、「おーおーおー」みたいなコーラスは布袋さんぽいと素直に思うかな。布袋さんが歌ってるから、とかそういうのではなくて、こういうコーラスの入れ方が、布袋さんぽいかなあ、と。
あたしはこの頃なんてまだ全然リアルチビッコだったし、ましてや生まれも育ちも奈良ですから、東京とか新宿ロフトとか渋谷とかそんなトコでやってたこの頃のライブは、もちろん見れたりしないワケです。だから想像するしかないんですけども、ライブで出てきていきなり、
「お前ら乗ろうと乗るまいと俺には全然関係ねェ
仕事じゃなんて思っちゃいねェ お前らと一緒に遊びたいだけさ」
とか歌うんだろうなあ、とか思うともうニヤニヤしちゃうんですよね。
この歌詞もすごい好きだなあ。歌詞カードには「レースにはまらず走る事」て書いてあるんだけど、何回聴いても「レールにはまらず走る事」て聞こえて、何気にそっちのが意味が通ってる気もするんですけどね(笑)。
「理屈じゃねェさ その時間だけが おもしろかったら
それでいいだろ つまんねェ事は忘れちまいな」
辺りの歌詞が、さりげなく氷室さんがたまーに見せる、妙に刹那的なモノの考え方をチラリと見せてる気がします。
『WATCH YOUR BOY』
深沢さんの歌詞はけっこう即物的だなあ、と。
『TEENAGE EMOTION』も深沢さんだったのと合わせて考えると、脱退した二人が言ってた理由の「音楽性の違い」て、やっぱその辺なのかなあ、って思ったりもしました。
氷室さんにしても布袋さんにしても、もっと抱えてるモノは曖昧のような気がするんですよね。この頃は特に。音楽をやってる根本の衝動が、氷室さんも布袋さんももっと曖昧だったのかな、と勝手に思う。やっぱり取り巻く世間とか社会とか周囲って、もっと即物的で現実的だったと思うんですよね。その中での葛藤とか怒りとかてあったと思うんですけど、でももっと求めてたモノは漠然としてたんじゃないかなあ? とか思っちゃったりします。
『RATS』
こういう皮肉めいた歌詞書かせたら、氷室さんはピカイチですよね。エセちっくな英語の挟み方といい(笑)。こういう深層心理とかって、この頃と比べたら今なんて随分もう大人になってるはずの氷室さんでも、実は変わってないんじゃないかなって思う。物事を見る時に斜に構える角度が、この辺の歌詞を見ると今も変わってないんじゃないの、て思う。普通に。
氷室さんの歌詞って、ハッキリ言って全体のバランスがちぐはぐしてたりする事多いし、通して読んでも意味が全然つかめなかったり、内容ないなあ、とか思ったりする事多いんですね。だけど、それでもあたしが氷室さんの歌詞が大好きな理由って、痛かったり熱かったり、すごい冷たかったり、優しかったりする、生の言葉が入り込んでるトコロなんですよねえ。この曲で言えば「本音が最後の切り札か」ていう部分がすごく好き。
ここがなかったら、ただのアイロニカルでアナーキーちっくなパンクぽい歌だと思う。(その言葉の並びもなんかチグハグしてますけど)ただ単に「お前らなんて〜」て言ってるわけじゃなくて、どこかで自分も同じような事してる事を自覚しているような気がして、誰かにあてた言葉のようで、諸刃の刃で自分を自嘲してるような、そういう感じがあたしはしました。
そのくせミョーに曲調はポップな感じがするのがまた、氷室さんぽいよなあ、と。
途中で音が止まるトコロ、つい息止まっちゃうんですけど?
『MORAL』
ほんと、改めてすごい歌詞だよねえ(笑)。『CASE OF BOΦWY』でこの曲を歌う時、氷室さんがすんごいニンマリするんですよね。むっちゃ嬉しそうに舞台を歩くんだあ。
それが超好き!! 確か、お水かなんかを取りに行くんですけど、この曲のイントロがなって、お水飲まずに舞台の前の方まで戻って来るんですよ。その時、振り返りざまにすごいニンマリ笑ってて、イントロに合わせてのしのし、って肩をいからせて歩いてくる。その時の嬉しそうな顔ったらなくて、すごい好きでした。
どっかの雑誌のインタビューで、本当はそういうのイヤだよね、違うよね、という否定のつもりで歌詞を書いたら、それがパンクぽく受け止められて困った、みたいな事を言ってました。この曲なんて、そういうのの最たるもんでしょうね(笑)。コレが格好良いんだ、て思う若い子(特に男の子に多そう)て、なんだかけっこう居そうです。勘違いだヨ!
自分的には、一番の「自殺でニヤッ」と二番の「奴と別れてニヤッ」が、あまりに事象の重さに落差あるだろう、という感じがあって、そのバランスの悪さがけっこう気に入ってます。それって、逆説的に「同じようなもんだろ」と取ってもいいし、単にバランス悪いなあ、と取ってもいいのかもしれない。氷室さんがどっちのつもりだったかなんて、あたしにはわかるはずもありません・・・。ただ、深読みしようとすれば出来る曲だなあ、とは思う。
『GUERRILLA』
「ゆうべ鉄マンでまだ眠いんだがね」というのが良いですよね(笑)。あの訛りはどこの訛りなの? 群馬なのかな〜? 「太いネクタイ ボボボ ぶら下げて」というトコロが、なんかカワユイ感じで好きです。ボボボ、て(笑)。
これはアレですよね、BOΦWYのみんな(当時は六人ですか)で考えた歌詞なんですよね。歌詞の内容としては、松井さんが歌詞書いてる『WORKING MAN』に近いと思ったりします。いわゆる「レールにはまった生き方」してる人たちを皮肉った、そういう歌ですよねえ。「アンチサラリーマン賛歌」みたいな(笑)。
すごいバカっぽくて、どこか開き直ったみたいに歌うのに、歌詞の最後の方で「OH さめざめ Woo・・・」て言うのが、BOΦWYらしいというか(笑)。さらに「ぼく今、けっこう幸せだな」という布袋さんのセリフもね。これってすごい皮肉ですよねえ。で、タイトルが「ゲリラ」だって言うんだから、これまた・・・。どこまでも世間に対して不信感いっぱい斜に構えた人たちですね。
BOΦWYのイメージって、そういう不信感とか不満を「ダメなんだあ」て叫ぶわけじゃなくて、「知らないネ」ってスカすわけじゃなくて、すごく熱いのに肝心の部分は冷めてる感じがします。熱いのと冷たいのが混ざらずに一緒に入ってて、触れるとどっちだかわからない。コーティングとしては温度を下げてユルユル笑ったりもするんだけど、その中に秘めてる棘ってすごい鋭い感じがする。だからってむやみにこっちを刺してくるわけじゃないし。
不思議なバンドだなあ。
『ON MY BEAT』
カラオケで歌うと、一回噛んだら続き歌えなくなるんだよねえ。
この歌を歌う時の、氷室さんの独特の声の出し方が好きです。なんとなく歌い出しの前に息を吸う感じとか。この曲も、「来たきたあああああ」て思わせられる曲ですね。
「Last Gigs」のアンコールでこの曲を歌う時、会場全体が「ビ、ビ、ビ、ビ」て繰り返し何度も歌ってて、その時に氷室さんだけマイクを口元から離して、一人だけ時間止まったみたいに布袋さんの方見るシーンがあるんです。実際、あの時に氷室さんが何を見てたのかは知りませんけど。間違いなくすごい勢いでビートは刻まれてるのに、そこだけ時間も音も何もかも止まったみたいになる。そしてしばらくして、止まってた時を氷室さんがマイクに声を通して動かすのね。それがなんか哀しかったりせつなかったり氷室さんがとても儚く見えたり、でもそういう瞬間を見れた事が嬉しかったりして胸が痛くなったりします。氷室さんが止まった時を動かした事で、確実に「終わり」が現実味を帯びてくるんですよねえ。
こういう歌詞も大好きです。ストレートで飾り気がなくて、でもちゃんと伝わって、とても心地良い。右手の拳を振り上げたくなる曲ですね〜。ウフ。
『ENDLESS』
なぜか、いつも「ENDRESS」と書きそうになる。
この歌詞書いてる「MOOLIGHT」て一体誰なんでしょ?
にしても歌詞ていうても一行っきりしかないですけど(笑)。
「How many train must travel on」
うーん。某サイトで翻訳(直訳)すると、
「どれだけの列車が移動し続けるに違いないか」となります。よう意味わからん。
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